トレーニングで筋肉痛があっても筋トレはしてもいいのか?効果と疲労改善方法
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今回は【筋肉痛があるときの筋トレは意味がない?やめるべき?】というテーマでお話しします。
前半で初心者用記事・後半で専門的記事を掲載してますので、お好きな方をお読みください。
初心者記事【筋肉痛でも筋トレはしてもいいのか?】
結論
最初に結論を言ってしまうと、
筋肉痛とは?
まずは筋肉痛について確認しましょう。
筋肉痛には、
- 「即発性筋肉痛」
- 「遅発性筋肉痛」
の2種類があります。
多くの人が経験するのは遅発性筋肉痛です(このブログでも遅発性筋肉痛を指しています)。
即発性筋肉痛は運動中や直後に感じる痛みで、遅発性筋肉痛は運動後1~3日後にピークに達するものです。どちらも筋肉の痛みですが、現れるタイミングが違います。
筋肉痛については多くの研究が行われており、まだすべてが解明されていないものの、いくつかの点がわかっています。
- 筋肉痛の主な原因は筋損傷の可能性が高いが、完全には断言できない。
- 筋肉痛の強さと筋損傷の程度は必ずしも比例しない。
- 筋肉痛の原因として代謝ストレスや活性酸素も関与している可能性がある。
- 筋トレを繰り返すことで、筋肉痛が軽減される現象(リピーテッド・バウト効果)が確認されているが、そのメカニズムは不明。
- 筋肉痛があるときは筋力も低下するが、最大5日で回復する。(個人差はある)
これらの詳細は、こちらも併せて読むと、より理解が深まると思います。
筋肉痛があると筋トレの効果は落ちるのか?
筋肉痛があるときのトレーニングについて質問を受けることが多く、特に
「筋肉痛がある状態でトレーニングをすると効果がないのでは?」
という懸念が多く見られます。
確かに、筋肉痛がある状態では、筋トレの効果が「ゼロになる」ことはないものの、「少なくなる」可能性は考えられます。
例えば、初心者を対象に行われた研究(※1.専門記事にて詳細説明)では、
- 1セットのトレーニングを行ったグループは筋力が14%増加
- 3セットを行ったグループでは21%増加
これらの研究結果からわかるように、筋トレはやればやるほど効果が期待できるのです。
しかし、筋肉痛があるときには、通常ならできるトレーニング量や質が低下してしまうことがあり、それが結果として効果を減少させる可能性があります。
筋肉痛でも筋トレしていいの?
結論として、筋肉痛がある場合でも、痛みが我慢できる範囲であれば筋トレをしても大丈夫です。
実際、リピーテッド・バウト効果により、筋トレを続けることで筋肉痛が軽減される現象も確認されています。
不慣れな運動は最初は大きなダメージ起こるけど、2度め以降はダメージが小さくなる。これをリピーテッドバウトエフェクトと言う。不慣れな種目を行う時や、休養からトレーニングを再開するときは、最初はボリュームを少なくするのが良い。ボリュームが少なくてもリピーテッドバウトエフェクトは得られる。
例えば、筋肉痛が完全に回復するまでに1週間かかるとして、筋肉痛が治るまでトレーニングを休むと1か月で5回しかできませんが、筋肉痛が残っていてもトレーニングを続ければ1か月で9回のトレーニングが可能です。
この場合、筋肉痛がある日にはトレーニングの質が低下するかもしれませんが、筋肉痛が弱まる日が増え、全体的なトレーニング量が増えるため、長期的に見るとより効果的です。
専門用記事①
【今回の参考文献はこちら】
Delayed onset muscle soreness (DOMS) management: present state of the art
遅発性筋肉痛:治療戦略とパフォーマンス要因(管理)
激しい運動や慣れない身体活動の後に筋肉に生じる痛みで、運動後12~24時間後に始まり、通常は48時間から72時間以内にピークに達します。
この痛みは、運動によって引き起こされた筋肉の微細な損傷や炎症が原因であると考えられています。DOMSの管理は、多くのアスリートや一般の運動愛好者にとって重要な課題であり、適切な対処法が必要とされています。
1. DOMSの原因とメカニズム
DOMSの原因は筋肉の微細な損傷です。特にエキセントリック収縮(筋肉が伸びながら力を発揮する運動)において、筋線維や周囲の結合組織が損傷することで発生します。
この損傷が炎症反応を引き起こし、痛みを伴うことが知られています。さらに、損傷部位で発生する炎症性物質や活性酸素種(ROS)が筋肉痛の原因となり、これが痛みを感じる要因として働きます。
筋損傷がどのようにして痛みを引き起こすのかについては、まだ完全に解明されていない部分もありますが、いくつかの仮説が提案されています。
一つの仮説は、
2. DOMSの一般的な症状
DOMSの主な症状は、運動後に感じる筋肉の痛みと不快感です。
痛みは筋肉が損傷した部分に集中し、触れたり動かしたりすると悪化します。
- 痛みは通常、運動後24〜72時間の間がピーク
- その後数日で徐々に軽減
- これに加えて、筋肉の硬直や可動域の制限、筋力の一時的な低下
などもDOMSの症状として報告されています。これらの症状は、特にエキセントリック運動を行った場合に顕著に現れます。
3. DOMSの予防策
DOMSの予防には、運動プログラムの計画が重要です。
例えば、急激に負荷をかけたり新しい運動を始める際には、段階的に負荷を増やしていくことが推奨されています。これにより、筋肉の適応が促され、損傷を最小限に抑えることができます。
さらに、ウォームアップやクールダウンの重要性も強調されています。ウォームアップは、筋肉を温め、筋線維の柔軟性を高めることで損傷のリスクを軽減し、クールダウンは、運動後の筋肉の回復を助ける役割を果たします。
また、筋力トレーニングの際には、エキセントリック運動の割合を徐々に増やしていくことが有効です。これにより、筋肉が徐々に負荷に適応し、DOMSの発生頻度や強度を低減させることができます。
4. DOMSの管理法
DOMSの管理にはさまざまな方法がありますが、現在までに絶対的な治療法は見つかっていません。以下は、一般的に推奨されている管理法のいくつかです。
4.1 休息とリカバリー
筋肉が損傷した場合、体には自然治癒能力があり、休息を取ることで回復が促進されます。特に、運動後の48〜72時間は、損傷した筋肉が最も回復を必要とする期間であり、この間に十分な休息を取ることが推奨されています。
また、低強度の運動(アクティブリカバリー)も痛みの軽減に役立つことがあります。これは、軽い運動によって血流が促進され、損傷した筋肉に必要な酸素や栄養素が供給されるためです。
4.2 氷や冷却療法
氷や冷却療法は、炎症を抑えるために使用される一般的な手段です。運動後すぐに患部を冷却することで、血管を収縮させ、炎症や腫れを抑えることができます。また、冷却は痛みを軽減する効果もあり、DOMSの初期症状に対しては有効です。しかし、冷却療法の効果については意見が分かれており、すべてのケースで有効であるとは限りません。
4.3 マッサージ
マッサージは、DOMSの痛みを和らげるための人気のある方法です。筋肉をほぐし、血流を促進することで、回復を助ける効果が期待できます。特に、エキセントリック運動後の筋肉の緊張を和らげるためには、軽いマッサージが有効です。ただし、激しいマッサージはかえって筋肉の損傷を悪化させる可能性があるため、注意が必要です。
4.4 ストレッチング
DOMSの予防と管理には、適度なストレッチングも有効です。運動後に軽いストレッチを行うことで、筋肉の柔軟性が高まり、痛みが軽減されることがあります。ただし、DOMSが発生した後の強いストレッチは筋肉の痛みを悪化させる可能性があるため、無理をしない範囲で行うことが大切です。
4.5 栄養サポート
栄養の観点からも、DOMSの管理に効果が期待されています。
特に、抗酸化物質や抗炎症作用のある栄養素を含む食品
- ビタミンC
- ビタミンE
- オメガ3脂肪酸
は、筋肉の炎症を軽減し、回復を促す効果があります。また、タンパク質の摂取も重要で、筋肉の修復を助けるために十分なタンパク質を摂ることが推奨されます。さらに、運動直後に糖質を摂取することで、グリコーゲンの回復が促され、筋肉の回復も早まります。
5. 最新の研究と今後の展望
近年、DOMSのメカニズムや管理方法に関する研究が進展しています。
例えば
など、従来の方法とは異なるアプローチも注目されています。これらの新しい治療法は、筋肉の回復を促進し、痛みを軽減する可能性があるとされていますが、まだ十分なエビデンスが得られていないため、今後の研究が期待されています。
さらに、分子生物学的な観点からも、筋肉の損傷や炎症に関与する遺伝子や分子メカニズムの解明が進んでおり、これに基づいた新しい治療法の開発が進められています。
まとめ
DOMSは、多くの人が経験する筋肉痛であり、そのメカニズムや管理方法に関する理解が進んでいます。筋肉の微細な損傷や炎症が原因となるこの痛みは、適切な対処法を用いることで軽減することが可能です。休息や冷却、マッサージ、ストレッチ、栄養サポートなどの多角的観点からのアプローチが重要になります。
専門用記事②
【今回の参考文献】
The influence of volume of exercise on early adaptations to strength training
運動量が筋力トレーニングの早期適応に与える影響
この論文では、運動量の違いが筋力、筋肉量、神経系の適応に与える影響を考察し、特に初期のトレーニング段階に焦点を当てています。
1. 筋力トレーニングと運動量の基本概念
筋力トレーニングにおける運動量とは、
運動量が多いトレーニングは、複数のセットとレップを含む高負荷のトレーニングセッションを指し、一方で、運動量が少ないトレーニングは、少ないセットとレップで構成されるものです。
トレーニングのボリュームは、筋肉の発達や筋力の向上にとって重要な要素の一つであり、これが神経系と筋肉の適応にどのように影響を与えるかが本論文のテーマです。
初期段階における筋力トレーニングの適応は、
神経系の適応は、トレーニングの初期に起こり、運動パフォーマンスを向上させるために筋力を効率的に発揮できるようになります。筋肉の肥大(筋肥大)は、トレーニングを続けることで筋線維が大きくなる現象です。これらの適応は、運動量によって異なる影響を受ける可能性があります。
2. 神経系の適応と運動量の関係
筋力トレーニングの初期段階では、神経系の適応が最も顕著に現れます。これは、神経系が筋肉の活動をより効果的に制御できるようになることで、筋力の向上が見られる現象です。
具体的には、運動単位(motor unit)の動員パターンが改善され、筋肉の収縮がより協調的になります。この過程では、トレーニング量が多い場合と少ない場合で神経系の適応がどのように異なるかが重要な点です。
研究によれば、運動量が少なくても神経系の適応は十分に起こるとされています。
これは、筋力トレーニングの初期段階において、低量のトレーニングでも神経系が迅速に適応することができるためです。したがって、特に初心者の場合、過度に高い運動量は必ずしも必要ではないと考えられます。逆に、運動量が多すぎると神経系が過度に疲労し、パフォーマンスが低下する可能性があります。
一方で、運動量が多いトレーニングでは、より多くの刺激が神経系に加わり、その結果、適応がより早く進む可能性があります。しかし、神経系の適応は比較的早い段階で飽和するため、トレーニングの効果を最大化するためには、適切な運動量を選択することが重要です。
3. 筋肥大と運動量の関係
筋肉の成長、すなわち筋肥大は、筋力トレーニングのもう一つの主要な適応です。筋肥大は、筋線維に微細な損傷が生じ、その修復過程で筋肉が大きくなる現象です。運動量が筋肥大にどのように影響を与えるかは、トレーニングプログラムを設計する上で重要な要素です。
多くの研究で示されているように、筋肥大は通常、高い運動量によって促進されます。これは、より多くのセットとレップを行うことで、筋肉に対する刺激が増え、筋線維が損傷しやすくなるためです。その結果、筋肉の修復と成長が促進されます。具体的には、トレーニングセッションごとの総運動量が多いほど、筋肥大の効果は大きくなる傾向があります。
ただし、運動量が多すぎると、筋肉が過度に疲労し、回復が遅れるリスクがあります。回復が十分に行われない場合、筋肥大の効果が減少し、逆にパフォーマンスが低下する可能性があります。このため、筋肥大を最大化するためには、運動量を適切に調整し、筋肉が十分に回復できるようにすることが重要です。
4. トレーニングの周波数と運動量のバランス
筋力トレーニングの効果を最大化するためには、運動量とトレーニングの周波数のバランスを取ることが不可欠です。運動量が多い場合、トレーニングセッションの頻度を減らす必要があるかもしれません。一方で、運動量が少ない場合は、トレーニング頻度を増やすことで、総合的な負荷を増加させることができます。
例えば、1回のトレーニングセッションで高い運動量を行うと、その後の回復に時間がかかり、週に1~2回のトレーニングしか行えない可能性があります。
一方、運動量が少ない場合、週に3~4回のトレーニングを行うことが可能であり、トータルの運動量を確保できます。このように、運動量とトレーニングの周波数を適切に調整することで、筋力トレーニングの効果を最大化することができます。
また、トレーニングの周波数は、トレーニング経験や個々のフィットネスレベルにも影響を受けます。初心者や中級者の場合、週に2~3回のトレーニングが最適とされていますが、上級者になると、より高頻度でのトレーニングが可能になります。
5. 早期適応における個別差
筋力トレーニングに対する早期の適応には、個々の身体的特性や遺伝的要因も影響を与えます。一部の人々は、同じ運動量であっても他の人よりも早く筋力や筋肥大を経験することができます。これは、筋肉の繊維タイプやホルモンの反応、さらには遺伝的な要素が関与しているためです。
筋繊維には、
- 速筋(タイプII)
- 遅筋(タイプI)
があります。
このため、速筋の割合が多い人は、筋肥大の効果を早期に実感しやすく、運動量に対する反応も速くなる可能性があります。
一方で、遅筋の割合が高い人は、筋力向上や筋肥大の効果が現れるまでに時間がかかることがあります。そのため、運動量を調整し、個々の特性に合わせたトレーニングプログラムを作成することが重要です。
6. 実践的な応用とトレーニングプログラムの設計
筋力トレーニングの早期適応を効果的に引き出すためには、個々の目標やフィットネスレベルに応じた運動量を設定することが重要です。以下は、トレーニングプログラムを設計する際に考慮すべきいくつかのポイントです。
6.1 初心者の場合
初心者に対しては、低量のトレーニングから開始し、神経系の適応を優先することが推奨されます。初期段階では、筋肥大よりも神経系の適応が早く起こるため、無理に高量のトレーニングを行う必要はありません。
2~3セット、8~12回のレップ数を目安にし、週に2~3回の頻度でトレーニングを行うことが効果的
6.2 中級者および上級者の場合
中級者や上級者になると、筋肥大を目指した高量のトレーニングが効果的です。4~6セット、6~10回のレップ数を行うことで、筋肉に十分な刺激を与えることができます。ただし、高量のトレーニングを行う場合は、十分な休息期間を設け、筋肉が回復する時間を確保することが重要です。
4~6セット、6~10回のレップ数を行うことで、筋肉に十分な刺激を与えることができる。
高重量を扱う場合は十分な休憩を確保すること。
まとめ
「The influence of volume of exercise on early adaptations to strength training」では、運動量が筋力トレーニングの初期適応にどのように影響を与えるかを考察しています。運動量が神経系の適応や筋肥大に与える影響は異なり、特に初心者では低量のトレーニングでも神経系の適応が十分に得られることが示されています。運動量が多い場合、筋肥大が促進されますが、過度な運動量は逆効果となる可能性もあるため、適切なバランスが重要です。
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今回は
【筋肉痛があるときの筋トレは意味がない?やめるべき?】というテーマでお話しします。
前半で初心者用記事・後半で専門的記事を掲載してますので、お好きな方をお読みください。
初心者記事【筋肉痛でも筋トレはしてもいいのか?】
結論
最初に結論を言ってしまうと、
筋肉痛とは?
まずは筋肉痛について確認しましょう。
筋肉痛には、
- 「即発性筋肉痛」
- 「遅発性筋肉痛」
の2種類があります。
多くの人が経験するのは遅発性筋肉痛です(このブログでも遅発性筋肉痛を指しています)。
即発性筋肉痛は運動中や直後に感じる痛みで、遅発性筋肉痛は運動後1~3日後にピークに達するものです。どちらも筋肉の痛みですが、現れるタイミングが違います。
筋肉痛については多くの研究が行われており、まだすべてが解明されていないものの、いくつかの点がわかっています。
- 筋肉痛の主な原因は筋損傷の可能性が高いが、完全には断言できない。
- 筋肉痛の強さと筋損傷の程度は必ずしも比例しない。
- 筋肉痛の原因として代謝ストレスや活性酸素も関与している可能性がある。
- 筋トレを繰り返すことで、筋肉痛が軽減される現象(リピーテッド・バウト効果)が確認されているが、そのメカニズムは不明。
- 筋肉痛があるときは筋力も低下するが、最大5日で回復する。(個人差はある)
これらの詳細は、こちらも併せて読むと、より理解が深まると思います。
筋肉痛があると筋トレの効果は落ちるのか?
筋肉痛があるときのトレーニングについて質問を受けることが多く、特に
「筋肉痛がある状態でトレーニングをすると効果がないのでは?」
という懸念が多く見られます。
確かに、筋肉痛がある状態では、筋トレの効果が「ゼロになる」ことはないものの、「少なくなる」可能性は考えられます。
例えば、初心者を対象に行われた研究(※1.専門記事にて詳細説明)では、
- 1セットのトレーニングを行ったグループは筋力が14%増加
- 3セットを行ったグループでは21%増加
これらの研究結果からわかるように、筋トレはやればやるほど効果が期待できるのです。
しかし、筋肉痛があるときには、通常ならできるトレーニング量や質が低下してしまうことがあり、それが結果として効果を減少させる可能性があります。
筋肉痛でも筋トレしていいの?
結論として、筋肉痛がある場合でも、痛みが我慢できる範囲であれば筋トレをしても大丈夫です。
実際、リピーテッド・バウト効果により、筋トレを続けることで筋肉痛が軽減される現象も確認されています。
(repeated bout effect)とは?
不慣れな運動は最初は大きなダメージ起こるけど、2度め以降はダメージが小さくなる。これをリピーテッドバウトエフェクトと言う。不慣れな種目を行う時や、休養からトレーニングを再開するときは、最初はボリュームを少なくするのが良い。ボリュームが少なくてもリピーテッドバウトエフェクトは得られる。
例えば、筋肉痛が完全に回復するまでに1週間かかるとして、筋肉痛が治るまでトレーニングを休むと1か月で5回しかできませんが、筋肉痛が残っていてもトレーニングを続ければ1か月で9回のトレーニングが可能です。
この場合、筋肉痛がある日にはトレーニングの質が低下するかもしれませんが、筋肉痛が弱まる日が増え、全体的なトレーニング量が増えるため、長期的に見るとより効果的です。
専門用記事①
【今回の参考文献はこちら】
Delayed onset muscle soreness (DOMS) management: present state of the art
遅発性筋肉痛:治療戦略とパフォーマンス要因(管理)
激しい運動や慣れない身体活動の後に筋肉に生じる痛みで、運動後12~24時間後に始まり、通常は48時間から72時間以内にピークに達します。
この痛みは、運動によって引き起こされた筋肉の微細な損傷や炎症が原因であると考えられています。DOMSの管理は、多くのアスリートや一般の運動愛好者にとって重要な課題であり、適切な対処法が必要とされています。
1. DOMSの原因とメカニズム
DOMSの原因は筋肉の微細な損傷です。特にエキセントリック収縮(筋肉が伸びながら力を発揮する運動)において、筋線維や周囲の結合組織が損傷することで発生します。
この損傷が炎症反応を引き起こし、痛みを伴うことが知られています。さらに、損傷部位で発生する炎症性物質や活性酸素種(ROS)が筋肉痛の原因となり、これが痛みを感じる要因として働きます。
筋損傷がどのようにして痛みを引き起こすのかについては、まだ完全に解明されていない部分もありますが、いくつかの仮説が提案されています。
一つの仮説は、
2. DOMSの一般的な症状
DOMSの主な症状は、運動後に感じる筋肉の痛みと不快感です。
痛みは筋肉が損傷した部分に集中し、触れたり動かしたりすると悪化します。
- 痛みは通常、運動後24〜72時間の間がピーク
- その後数日で徐々に軽減
- これに加えて、筋肉の硬直や可動域の制限、筋力の一時的な低下
などもDOMSの症状として報告されています。これらの症状は、特にエキセントリック運動を行った場合に顕著に現れます。
3. DOMSの予防策
DOMSの予防には、運動プログラムの計画が重要です。
例えば、急激に負荷をかけたり新しい運動を始める際には、段階的に負荷を増やしていくことが推奨されています。これにより、筋肉の適応が促され、損傷を最小限に抑えることができます。
さらに、ウォームアップやクールダウンの重要性も強調されています。ウォームアップは、筋肉を温め、筋線維の柔軟性を高めることで損傷のリスクを軽減し、クールダウンは、運動後の筋肉の回復を助ける役割を果たします。
また、筋力トレーニングの際には、エキセントリック運動の割合を徐々に増やしていくことが有効です。これにより、筋肉が徐々に負荷に適応し、DOMSの発生頻度や強度を低減させることができます。
4. DOMSの管理法
DOMSの管理にはさまざまな方法がありますが、現在までに絶対的な治療法は見つかっていません。以下は、一般的に推奨されている管理法のいくつかです。
4.1 休息とリカバリー
筋肉が損傷した場合、体には自然治癒能力があり、休息を取ることで回復が促進されます。特に、運動後の48〜72時間は、損傷した筋肉が最も回復を必要とする期間であり、この間に十分な休息を取ることが推奨されています。
また、低強度の運動(アクティブリカバリー)も痛みの軽減に役立つことがあります。これは、軽い運動によって血流が促進され、損傷した筋肉に必要な酸素や栄養素が供給されるためです。
4.2 氷や冷却療法
氷や冷却療法は、炎症を抑えるために使用される一般的な手段です。運動後すぐに患部を冷却することで、血管を収縮させ、炎症や腫れを抑えることができます。また、冷却は痛みを軽減する効果もあり、DOMSの初期症状に対しては有効です。しかし、冷却療法の効果については意見が分かれており、すべてのケースで有効であるとは限りません。
4.3 マッサージ
マッサージは、DOMSの痛みを和らげるための人気のある方法です。筋肉をほぐし、血流を促進することで、回復を助ける効果が期待できます。特に、エキセントリック運動後の筋肉の緊張を和らげるためには、軽いマッサージが有効です。ただし、激しいマッサージはかえって筋肉の損傷を悪化させる可能性があるため、注意が必要です。
4.4 ストレッチング
DOMSの予防と管理には、適度なストレッチングも有効です。運動後に軽いストレッチを行うことで、筋肉の柔軟性が高まり、痛みが軽減されることがあります。ただし、DOMSが発生した後の強いストレッチは筋肉の痛みを悪化させる可能性があるため、無理をしない範囲で行うことが大切です。
4.5 栄養サポート
栄養の観点からも、DOMSの管理に効果が期待されています。
特に、抗酸化物質や抗炎症作用のある栄養素を含む食品
- ビタミンC
- ビタミンE
- オメガ3脂肪酸
は、筋肉の炎症を軽減し、回復を促す効果があります。また、タンパク質の摂取も重要で、筋肉の修復を助けるために十分なタンパク質を摂ることが推奨されます。さらに、運動直後に糖質を摂取することで、グリコーゲンの回復が促され、筋肉の回復も早まります。
5. 最新の研究と今後の展望
近年、DOMSのメカニズムや管理方法に関する研究が進展しています。
例えば
など、従来の方法とは異なるアプローチも注目されています。これらの新しい治療法は、筋肉の回復を促進し、痛みを軽減する可能性があるとされていますが、まだ十分なエビデンスが得られていないため、今後の研究が期待されています。
さらに、分子生物学的な観点からも、筋肉の損傷や炎症に関与する遺伝子や分子メカニズムの解明が進んでおり、これに基づいた新しい治療法の開発が進められています。
まとめ
DOMSは、多くの人が経験する筋肉痛であり、そのメカニズムや管理方法に関する理解が進んでいます。筋肉の微細な損傷や炎症が原因となるこの痛みは、適切な対処法を用いることで軽減することが可能です。休息や冷却、マッサージ、ストレッチ、栄養サポートなどの多角的観点からのアプローチが重要になります。
専門用記事②
【今回の参考文献】
The influence of volume of exercise on early adaptations to strength training
運動量が筋力トレーニングの早期適応に与える影響
この論文では、運動量の違いが筋力、筋肉量、神経系の適応に与える影響を考察し、特に初期のトレーニング段階に焦点を当てています。
1. 筋力トレーニングと運動量の基本概念
筋力トレーニングにおける運動量とは、
運動量が多いトレーニングは、複数のセットとレップを含む高負荷のトレーニングセッションを指し、一方で、運動量が少ないトレーニングは、少ないセットとレップで構成されるものです。
トレーニングのボリュームは、筋肉の発達や筋力の向上にとって重要な要素の一つであり、これが神経系と筋肉の適応にどのように影響を与えるかが本論文のテーマです。
初期段階における筋力トレーニングの適応は、
神経系の適応は、トレーニングの初期に起こり、運動パフォーマンスを向上させるために筋力を効率的に発揮できるようになります。筋肉の肥大(筋肥大)は、トレーニングを続けることで筋線維が大きくなる現象です。これらの適応は、運動量によって異なる影響を受ける可能性があります。
2. 神経系の適応と運動量の関係
筋力トレーニングの初期段階では、神経系の適応が最も顕著に現れます。これは、神経系が筋肉の活動をより効果的に制御できるようになることで、筋力の向上が見られる現象です。
具体的には、運動単位(motor unit)の動員パターンが改善され、筋肉の収縮がより協調的になります。この過程では、トレーニング量が多い場合と少ない場合で神経系の適応がどのように異なるかが重要な点です。
研究によれば、運動量が少なくても神経系の適応は十分に起こるとされています。
これは、筋力トレーニングの初期段階において、低量のトレーニングでも神経系が迅速に適応することができるためです。したがって、特に初心者の場合、過度に高い運動量は必ずしも必要ではないと考えられます。逆に、運動量が多すぎると神経系が過度に疲労し、パフォーマンスが低下する可能性があります。
一方で、運動量が多いトレーニングでは、より多くの刺激が神経系に加わり、その結果、適応がより早く進む可能性があります。しかし、神経系の適応は比較的早い段階で飽和するため、トレーニングの効果を最大化するためには、適切な運動量を選択することが重要です。
3. 筋肥大と運動量の関係
筋肉の成長、すなわち筋肥大は、筋力トレーニングのもう一つの主要な適応です。筋肥大は、筋線維に微細な損傷が生じ、その修復過程で筋肉が大きくなる現象です。運動量が筋肥大にどのように影響を与えるかは、トレーニングプログラムを設計する上で重要な要素です。
多くの研究で示されているように、筋肥大は通常、高い運動量によって促進されます。これは、より多くのセットとレップを行うことで、筋肉に対する刺激が増え、筋線維が損傷しやすくなるためです。その結果、筋肉の修復と成長が促進されます。具体的には、トレーニングセッションごとの総運動量が多いほど、筋肥大の効果は大きくなる傾向があります。
ただし、運動量が多すぎると、筋肉が過度に疲労し、回復が遅れるリスクがあります。回復が十分に行われない場合、筋肥大の効果が減少し、逆にパフォーマンスが低下する可能性があります。このため、筋肥大を最大化するためには、運動量を適切に調整し、筋肉が十分に回復できるようにすることが重要です。
4. トレーニングの周波数と運動量のバランス
筋力トレーニングの効果を最大化するためには、運動量とトレーニングの周波数のバランスを取ることが不可欠です。
運動量が多い場合、トレーニングセッションの頻度を減らす必要があるかもしれません。一方で、運動量が少ない場合は、トレーニング頻度を増やすことで、総合的な負荷を増加させることができます。
例えば、1回のトレーニングセッションで高い運動量を行うと、その後の回復に時間がかかり、週に1~2回のトレーニングしか行えない可能性があります。
一方、運動量が少ない場合、週に3~4回のトレーニングを行うことが可能であり、トータルの運動量を確保できます。このように、運動量とトレーニングの周波数を適切に調整することで、筋力トレーニングの効果を最大化することができます。
また、トレーニングの周波数は、トレーニング経験や個々のフィットネスレベルにも影響を受けます。初心者や中級者の場合、週に2~3回のトレーニングが最適とされていますが、上級者になると、より高頻度でのトレーニングが可能になります。
5. 早期適応における個別差
筋力トレーニングに対する早期の適応には、個々の身体的特性や遺伝的要因も影響を与えます。一部の人々は、同じ運動量であっても他の人よりも早く筋力や筋肥大を経験することができます。これは、筋肉の繊維タイプやホルモンの反応、さらには遺伝的な要素が関与しているためです。
筋繊維には、
- 速筋(タイプII)
- 遅筋(タイプI)
があります。
このため、速筋の割合が多い人は、筋肥大の効果を早期に実感しやすく、運動量に対する反応も速くなる可能性があります。
一方で、遅筋の割合が高い人は、筋力向上や筋肥大の効果が現れるまでに時間がかかることがあります。そのため、運動量を調整し、個々の特性に合わせたトレーニングプログラムを作成することが重要です。
6. 実践的な応用とトレーニングプログラムの設計
筋力トレーニングの早期適応を効果的に引き出すためには、個々の目標やフィットネスレベルに応じた運動量を設定することが重要です。以下は、トレーニングプログラムを設計する際に考慮すべきいくつかのポイントです。
6.1 初心者の場合
初心者に対しては、低量のトレーニングから開始し、神経系の適応を優先することが推奨されます。初期段階では、筋肥大よりも神経系の適応が早く起こるため、無理に高量のトレーニングを行う必要はありません。
2~3セット、8~12回のレップ数を目安にし、週に2~3回の頻度でトレーニングを行うことが効果的
6.2 中級者および上級者の場合
中級者や上級者になると、筋肥大を目指した高量のトレーニングが効果的です。4~6セット、6~10回のレップ数を行うことで、筋肉に十分な刺激を与えることができます。ただし、高量のトレーニングを行う場合は、十分な休息期間を設け、筋肉が回復する時間を確保することが重要です。
4~6セット、6~10回のレップ数を行うことで、筋肉に十分な刺激を与えることができる。
高重量を扱う場合は十分な休憩を確保すること。
まとめ
「The influence of volume of exercise on early adaptations to strength training」では、運動量が筋力トレーニングの初期適応にどのように影響を与えるかを考察しています。
運動量が神経系の適応や筋肥大に与える影響は異なり、特に初心者では低量のトレーニングでも神経系の適応が十分に得られることが示されています。運動量が多い場合、筋肥大が促進されますが、過度な運動量は逆効果となる可能性もあるため、適切なバランスが重要です。