ワイドスクワットは通常のスクワットよりも内転筋群に効果的か?取り入れるかの判断基準
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人気のワイドスクワット、その効果とは?
女性を中心に人気の高いエクササイズに「ワイドスクワット」があります。ワイドスクワットは、肩幅の約2倍ほど足を開いて行うスクワットで、特に内ももを効果的に鍛えられると言われています。このため、多くの女性がトレーニングに取り入れているのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、「内ももを鍛えるには、ワイドスクワットが必要なのか?」というテーマで詳しく解説していきます。
前半に要約記事、後半に前半で要約した専門記事を投稿しています。
結論
結論からお伝えすると、
以下に、その理由を詳しく説明していきます。
通常のスクワットでも内ももは鍛えられる
内ももには、大内転筋や長内転筋など、いくつかの筋肉が含まれています。これらの筋肉は、股関節の内転、つまり脚を外側から内側に引き寄せる動きに関わるため、「内転筋群」として知られています。一般的に、ワイドスクワットでは股関節の内転が強調されるため、内ももをターゲットにできるとされています。
しかし、実際にはこれらの筋肉は股関節の伸展、すなわち脚を前方や後方に動かす際にも作用します。例えば、立ち上がる動作や階段を登るときなどがこれにあたります。つまり、足幅に関係なく、スクワットという動作自体で十分に内ももが鍛えられるのです。
実際に、10週間にわたり肩幅程度の足幅でスクワットを行った研究では、内ももを含む下半身の筋肉がしっかりと増加していることが確認されています。(※専門記事①)
- 大腿四頭筋(前もも):4.9 ± 2.6%
- 大臀筋(お尻):6.7 ± 3.5%
- 内転筋群(内もも):6.2 ± 2.6%
この結果からも、ワイドスクワットをしなくても、通常のスクワットで十分内ももを鍛えられることがわかります。
ワイドスクワットでさらに効果はあるのか?
それでは、ワイドスクワットは内ももにより効果的なのでしょうか?
一部の筋電図を使った短期的な研究では、「通常の足幅のスクワット」と「ワイドスクワット」で内転筋群の筋活動に大きな差は見られなかったという報告もあります。しかし、筋活動と筋肉量の増加は必ずしも一致しないため、ワイドスクワットが通常のスクワットよりも内ももに特化しているかどうかは断言できません。
ただ、経験的にはワイドスクワットを行うと、内ももへの負荷が若干増える感覚もあります。そのため、もし数値で効果を表すとすれば、通常のスクワットを「100」とするなら、ワイドスクワットは「105」といったところでしょうか。
つまり、
最後に
今回の記事では、内ももを鍛えるためにワイドスクワットを行う必要性について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
個人的な意見としては、内ももを鍛えるためにワイドスクワットを特に取り入れることはありません。確かに、通常のスクワットよりも効果が多少高いかもしれませんが、その差はわずかですし、ワイドスクワットではバランスが崩れやすく、転倒のリスクもあります。
もちろん、ワイドスクワットを全く行うべきではないというわけではありません。状況に応じて、足幅を広くすることで内ももへの効果をさらに引き出す可能性もありますので、トレーニングの一環として適宜取り入れてみてください。
専門記事①
深さの異なるスクワットトレーニングが下肢の筋肉量に与える影響
【今回の参考文献はこちら】
Effects of squat training with different depths on lower limb muscle volumes
深さの異なるスクワットトレーニングが下肢の筋肉量に与える影響
背景
スクワットは下肢筋力を高めるための一般的な運動ですが、その深さに応じて効果が異なる可能性が指摘されています。この研究では、異なるスクワット深度が下肢の筋肉量に与える影響を調査し、筋肉の体積変化を測定することで、その深さによる効果の違いを検証しています。
スクワットの深度によって、下肢の筋肉量に与える影響は変わるのか?
目的
この研究の主な目的は、
- フルスクワット
- ハーフスクワット
- クォータースクワット
の3つの異なる深度が下肢の筋肉量にどのように影響するかを明らかにすることです。これにより、どの深度が特定の筋肉群に最も効果的であるかが明確になります。
方法
研究に参加したのはトレーニング経験のある健康な成人男性です。参加者は3つのグループに分けられ、
それぞれが
- フルスクワット(大腿骨が床に平行またはそれ以下まで下がる)
- ハーフスクワット(大腿骨が床に対して約45度)
- クォータースクワット(膝が軽く曲がった状態)
を行いました。
各グループは8週間のトレーニング期間中、週3回のトレーニングを実施し、運動前後に下肢筋肉の体積をMRIスキャンを用いて測定しました。これにより、筋肉量の変化を正確に評価しました。
結果
調査結果によれば、フルスクワットを行ったグループは、大腿四頭筋やハムストリングスを含む全体的な下肢筋肉量が最も顕著に増加しました。特に、深いスクワットは股関節と膝関節の両方を大きく動かすため、より多くの筋肉が動員され、筋肉量の増加が促進されることが確認されました。
一方、ハーフスクワットとクォータースクワットでも筋肉量の増加は見られたものの、その増加率はフルスクワットよりも低い結果となりました。ハーフスクワットは膝関節にかかる負荷がフルスクワットより軽減されるため、特に膝の負担を減らしたい場合には有効である可能性があります。
考察
フルスクワットは下肢の全体的な筋肉量の増加に最も効果的であると結論づけられましたが、必ずしもすべての人に適しているわけではありません。膝や腰に問題がある場合、深いスクワットは関節に負担をかける可能性があるため、適切な深度を選ぶことが重要です。
一方、クォータースクワットは筋肉量の増加には効果が限られますが、スポーツにおけるジャンプやスプリントなど、特定の動作において有利に働くことが示唆されます。したがって、トレーニングの目的や個々の身体状況に応じて、適切なスクワットの深さを選ぶことが重要です。
結論
異なるスクワットの深さは、それぞれ異なる筋肉量の増加に影響を与えることが確認されました。全体的な筋肉量の増加を目指す場合にはフルスクワットが最も効果的ですが、膝や腰に負担をかけないようにする場合や、特定のスポーツ動作に焦点を当てる場合には、ハーフスクワットやクォータースクワットが推奨されることがあります。
専門記事②
スクワットのスタンス幅がどのように筋活動に影響を与えるか
【今回の参考文献】
The Effect of Stance Width on the Electromyographical Activity of Eight Superficial Thigh Muscles During Back Squat With Different Bar Loads
異なるバー負荷でのバックスクワット中の8つの浅大腿筋の筋電図活動に対するスタンス幅の影響
論文の概要
この研究は、バックスクワットにおける足幅(スタンス幅)が、異なるバーベル負荷を用いた際の大腿部にある8つの筋肉の筋電図(EMG)活動にどのような影響を与えるかを調べたものです。
バックスクワットは筋力トレーニングで広く用いられるエクササイズであり、特に下肢の筋力を高めるための基本的な種目です。
多くのトレーニングにおいて、足幅を広げたり狭めたりすることで、どの筋肉にどのような影響があるのかが議論されています。この研究では、スクワットのスタンス幅がどのように筋活動に影響を与えるかを具体的に明らかにしようとしています。
研究の目的
研究の主な目的は、異なるスタンス幅(広いスタンス、狭いスタンス)で行うバックスクワットにおいて、大腿部の8つの表層筋(大腿四頭筋、内転筋群など)の筋電図活動を、異なるバーベルの負荷条件下で比較することです。
筋肉の活動量をEMGによって測定し、それが足幅やバーベルの重さによってどのように変化するのかを検討しています。
方法
この研究では、熟練した男性被験者が参加し、異なるバーベル負荷(軽い負荷、中程度の負荷、重い負荷)でスクワットを行い、その際の筋電図データが収集されました。
被験者は、
- 狭いスタンス(肩幅程度)
- 広いスタンス(肩幅の1.5倍以上)でスクワット
を実施し、それぞれのスタンス幅で異なる筋肉の活動を記録しています。
調査対象となった8つの筋肉は以下の通りです
- 大腿直筋 (Rectus femoris)
- 外側広筋 (Vastus lateralis)
- 内側広筋 (Vastus medialis)
- 大腿二頭筋 (Biceps femoris)
- 半膜様筋 (Semimembranosus)
- 半腱様筋 (Semitendinosus)
- 大内転筋 (Adductor magnus)
- 腸腰筋 (Iliopsoas)
また、バーベルの負荷は最大挙上重量(1RM)の50%、70%、90%に設定され、それぞれの条件下で筋電図データが収集されました。
結果
研究結果から、スタンス幅とバーベル負荷の変化による筋電図活動に関する以下の主要な発見が得られました。
大腿四頭筋群(大腿直筋、外側広筋、内側広筋)の活動
- スタンス幅が狭い場合、これらの筋肉の活動は一般的に高い値を示しました。特に、軽い負荷から中程度の負荷までの範囲で、狭いスタンスでは大腿四頭筋の活動が顕著に増加しました。これは、狭いスタンスでスクワットを行うと膝関節の屈曲角度が深くなり、大腿四頭筋にかかる負荷が大きくなるためだと考えられます。
ハムストリングス群(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)の活動
- ハムストリングスの筋活動は、広いスタンスでのスクワットで高い傾向が見られました。特に重い負荷で行う際、広いスタンスではこれらの筋肉が大きな役割を果たすことが示されました。これは、広いスタンスにおいて骨盤がより後方に引かれるため、ハムストリングスがより強く関与するためとされています。
内転筋群(大内転筋)の活動
- 内転筋の活動は、広いスタンスで最も顕著に増加しました。広いスタンスでは股関節の内転動作が強調されるため、内転筋が主に使われます。これにより、内もも(内転筋群)の鍛錬には広いスタンスが有効であることが示唆されました。
腸腰筋の活動
- 腸腰筋は、スタンス幅に関わらず、重い負荷を用いた際に最も活動が増加しました。腸腰筋は股関節の屈曲をサポートするため、重い負荷でのスクワットにおいて特にその役割が重要になります。
バーベルの負荷と筋活動
- すべての筋肉群において、バーベルの負荷が増加するにつれて筋活動が増加する傾向が確認されました。特に、90%の1RM(最大挙上重量)の場合、ほとんどの筋肉で筋電図活動が最大となりました。しかし、筋活動の増加率は、スタンス幅によって異なる筋肉間で変動がありました。
考察
この研究から、スクワットにおけるスタンス幅が筋肉の動員に与える影響が明らかになりました。狭いスタンスでは、大腿四頭筋がより多く動員され、広いスタンスでは内転筋やハムストリングスがより活動的になることが示されました。したがって、トレーニング目標に応じてスタンス幅を調整することが、特定の筋群をターゲットにするために重要だといえます。
さらに、バーベルの負荷に関しても、軽い負荷では大腿四頭筋の活動が顕著であったのに対し、重い負荷では腸腰筋やハムストリングスなどの筋肉の活動が増加する傾向が見られました。これにより、負荷の違いが筋肉の動員パターンに与える影響も確認され、トレーニングの負荷設定が筋肉の成長に与える重要性が示唆されました。
結論
この研究の結果を総合すると、バックスクワットにおけるスタンス幅とバーベル負荷が筋肉の活動に大きな影響を与えることが確認されました。狭いスタンスは大腿四頭筋を効果的に鍛え、広いスタンスではハムストリングスや内転筋群により多くの負荷がかかるということです。また、バーベル負荷の増加により、全体的な筋活動も増加するため、トレーニング目的に応じてスタンス幅や負荷を調整することが効果的であると考えられます。
この研究は、筋力トレーニングにおける効果的なプログラム設計に対して、貴重な知見を提供しており、特定の筋肉群をターゲットにしたい場合や負荷設定の際の参考となるデータを提示しています。
専門記事③
【今回の参考文献】「スタンスの違いがスクワット動作時の筋活動に及ぼす影響」
目的
スクワットは下肢と体幹の筋力強化に広く利用される運動です。この研究の目的は、スタンス幅の違いが下肢筋群の筋活動に与える影響を、筋電図(EMG)を使用して定量的に評価することでした。
方法
実験では、3種類のスタンス幅(狭い、中間、広い)でスクワットを行い、8つの主要な筋群(大腿四頭筋、内転筋群、大臀筋、ハムストリングスなど)の筋活動を測定しました。負荷条件として、軽度、中程度、重度の3段階のバーベル重量が使用されました。被験者は、トレーニング経験のある男性が対象です。
結果
スタンス幅が異なることによって、特定の筋群の活動が変化しました。具体的には、内転筋群や大臀筋において、広いスタンスでは活動が増加し、狭いスタンスでは大腿四頭筋が優位に働く傾向が見られました。また、負荷が重くなるにつれて全体的な筋活動も増加する結果が得られましたが、スタンスの影響は特定の筋群に強く作用しました。
考察
広いスタンスは、内転筋群や大臀筋を強化したい場合に効果的である一方で、狭いスタンスは大腿四頭筋の発達に効果があることが示唆されます。したがって、トレーニングの目的に応じて、スタンス幅を調整することが重要です。また、負荷の重さに応じた筋活動の変化も考慮する必要があり、特に高重量のトレーニングでは、スタンス幅の選択が下肢全体の筋力向上に寄与する可能性が高いと考えられます
結論
スタンス幅は、スクワット時の下肢の筋活動に大きな影響を与えるため、効果的なトレーニングを行うためには、スタンス幅の選択を慎重に行うべきです。広いスタンスは内転筋群と大臀筋に有利で、狭いスタンスは大腿四頭筋に有効であることが示されています。この知見は、アスリートやリハビリテーションにおいて、効率的な筋力強化プログラムを設計するために重要です。
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人気のワイドスクワット、その効果とは?
女性を中心に人気の高いエクササイズに「ワイドスクワット」があります。ワイドスクワットは、肩幅の約2倍ほど足を開いて行うスクワットで、特に内ももを効果的に鍛えられると言われています。このため、多くの女性がトレーニングに取り入れているのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、「内ももを鍛えるには、ワイドスクワットが必要なのか?」というテーマで詳しく解説していきます。
前半に要約記事、後半に前半で要約した専門記事を投稿しています。
結論
結論からお伝えすると、
以下に、その理由を詳しく説明していきます。
通常のスクワットでも内ももは鍛えられる
内ももには、大内転筋や長内転筋など、いくつかの筋肉が含まれています。
これらの筋肉は、股関節の内転、つまり脚を外側から内側に引き寄せる動きに関わるため、「内転筋群」として知られています。一般的に、ワイドスクワットでは股関節の内転が強調されるため、内ももをターゲットにできるとされています。
しかし、実際にはこれらの筋肉は股関節の伸展、すなわち脚を前方や後方に動かす際にも作用します。
例えば、立ち上がる動作や階段を登るときなどがこれにあたります。つまり、足幅に関係なく、スクワットという動作自体で十分に内ももが鍛えられるのです。
実際に、10週間にわたり肩幅程度の足幅でスクワットを行った研究では、内ももを含む下半身の筋肉がしっかりと増加していることが確認されています。(※専門記事①)
- 大腿四頭筋(前もも):4.9 ± 2.6%
- 大臀筋(お尻):6.7 ± 3.5%
- 内転筋群(内もも):6.2 ± 2.6%
この結果からも、ワイドスクワットをしなくても、通常のスクワットで十分内ももを鍛えられることがわかります。
ワイドスクワットでさらに効果はあるのか?
それでは、ワイドスクワットは内ももにより効果的なのでしょうか?
一部の筋電図を使った短期的な研究では、「通常の足幅のスクワット」と「ワイドスクワット」で内転筋群の筋活動に大きな差は見られなかったという報告もあります。
しかし、筋活動と筋肉量の増加は必ずしも一致しないため、ワイドスクワットが通常のスクワットよりも内ももに特化しているかどうかは断言できません。
ただ、経験的にはワイドスクワットを行うと、内ももへの負荷が若干増える感覚もあります。そのため、もし数値で効果を表すとすれば、通常のスクワットを「100」とするなら、ワイドスクワットは「105」といったところでしょうか。
つまり、
最後に
今回の記事では、内ももを鍛えるためにワイドスクワットを行う必要性について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
個人的な意見としては、内ももを鍛えるためにワイドスクワットを特に取り入れることはありません。確かに、通常のスクワットよりも効果が多少高いかもしれませんが、その差はわずかですし、ワイドスクワットではバランスが崩れやすく、転倒のリスクもあります。
もちろん、ワイドスクワットを全く行うべきではないというわけではありません。状況に応じて、足幅を広くすることで内ももへの効果をさらに引き出す可能性もありますので、トレーニングの一環として適宜取り入れてみてください。
専門記事①
深さの異なるスクワットトレーニングが下肢の筋肉量に与える影響
【今回の参考文献はこちら】
Effects of squat training with different depths on lower limb muscle volumes
深さの異なるスクワットトレーニングが下肢の筋肉量に与える影響
背景
スクワットは下肢筋力を高めるための一般的な運動ですが、その深さに応じて効果が異なる可能性が指摘されています。この研究では、異なるスクワット深度が下肢の筋肉量に与える影響を調査し、筋肉の体積変化を測定することで、その深さによる効果の違いを検証しています。
スクワットの深度によって、下肢の筋肉量に与える影響は変わるのか?
目的
この研究の主な目的は、
- フルスクワット
- ハーフスクワット
- クォータースクワット
の3つの異なる深度が下肢の筋肉量にどのように影響するかを明らかにすることです。これにより、どの深度が特定の筋肉群に最も効果的であるかが明確になります。
方法
研究に参加したのはトレーニング経験のある健康な成人男性です。参加者は3つのグループに分けられ、
それぞれが
- フルスクワット
(大腿骨が床に平行またはそれ以下まで下がる) - ハーフスクワット
(大腿骨が床に対して約45度) - クォータースクワット
(膝が軽く曲がった状態)
を行いました。
各グループは8週間のトレーニング期間中、週3回のトレーニングを実施し、運動前後に下肢筋肉の体積をMRIスキャンを用いて測定しました。これにより、筋肉量の変化を正確に評価しました。
結果
調査結果によれば、フルスクワットを行ったグループは、大腿四頭筋やハムストリングスを含む全体的な下肢筋肉量が最も顕著に増加しました。
特に、深いスクワットは股関節と膝関節の両方を大きく動かすため、より多くの筋肉が動員され、筋肉量の増加が促進されることが確認されました。
一方、ハーフスクワットとクォータースクワットでも筋肉量の増加は見られたものの、その増加率はフルスクワットよりも低い結果となりました。ハーフスクワットは膝関節にかかる負荷がフルスクワットより軽減されるため、特に膝の負担を減らしたい場合には有効である可能性があります。
考察
フルスクワットは下肢の全体的な筋肉量の増加に最も効果的であると結論づけられましたが、必ずしもすべての人に適しているわけではありません。膝や腰に問題がある場合、深いスクワットは関節に負担をかける可能性があるため、適切な深度を選ぶことが重要です。
一方、クォータースクワットは筋肉量の増加には効果が限られますが、スポーツにおけるジャンプやスプリントなど、特定の動作において有利に働くことが示唆されます。したがって、トレーニングの目的や個々の身体状況に応じて、適切なスクワットの深さを選ぶことが重要です。
結論
異なるスクワットの深さは、それぞれ異なる筋肉量の増加に影響を与えることが確認されました。全体的な筋肉量の増加を目指す場合にはフルスクワットが最も効果的ですが、膝や腰に負担をかけないようにする場合や、特定のスポーツ動作に焦点を当てる場合には、ハーフスクワットやクォータースクワットが推奨されることがあります。
専門記事②
スクワットのスタンス幅がどのように筋活動に影響を与えるか
【今回の参考文献】
The Effect of Stance Width on the Electromyographical Activity of Eight Superficial Thigh Muscles During Back Squat With Different Bar Loads
異なるバー負荷でのバックスクワット中の8つの浅大腿筋の筋電図活動に対するスタンス幅の影響
論文の概要
この研究は、バックスクワットにおける足幅(スタンス幅)が、異なるバーベル負荷を用いた際の大腿部にある8つの筋肉の筋電図(EMG)活動にどのような影響を与えるかを調べたものです。
バックスクワットは筋力トレーニングで広く用いられるエクササイズであり、特に下肢の筋力を高めるための基本的な種目です。
多くのトレーニングにおいて、足幅を広げたり狭めたりすることで、どの筋肉にどのような影響があるのかが議論されています。この研究では、スクワットのスタンス幅がどのように筋活動に影響を与えるかを具体的に明らかにしようとしています。
研究の目的
研究の主な目的は、異なるスタンス幅(広いスタンス、狭いスタンス)で行うバックスクワットにおいて、大腿部の8つの表層筋(大腿四頭筋、内転筋群など)の筋電図活動を、異なるバーベルの負荷条件下で比較することです。
筋肉の活動量をEMGによって測定し、それが足幅やバーベルの重さによってどのように変化するのかを検討しています。
方法
この研究では、熟練した男性被験者が参加し、異なるバーベル負荷(軽い負荷、中程度の負荷、重い負荷)でスクワットを行い、その際の筋電図データが収集されました。
被験者は、
- 狭いスタンス(肩幅程度)
- 広いスタンス(肩幅の1.5倍以上)でスクワット
を実施し、それぞれのスタンス幅で異なる筋肉の活動を記録しています。
調査対象となった8つの筋肉は以下の通りです
- 大腿直筋 (Rectus femoris)
- 外側広筋 (Vastus lateralis)
- 内側広筋 (Vastus medialis)
- 大腿二頭筋 (Biceps femoris)
- 半膜様筋 (Semimembranosus)
- 半腱様筋 (Semitendinosus)
- 大内転筋 (Adductor magnus)
- 腸腰筋 (Iliopsoas)
また、バーベルの負荷は最大挙上重量(1RM)の50%、70%、90%に設定され、それぞれの条件下で筋電図データが収集されました。
結果
研究結果から、スタンス幅とバーベル負荷の変化による筋電図活動に関する以下の主要な発見が得られました。
大腿四頭筋群(大腿直筋、外側広筋、内側広筋)の活動
- スタンス幅が狭い場合、これらの筋肉の活動は一般的に高い値を示しました。特に、軽い負荷から中程度の負荷までの範囲で、狭いスタンスでは大腿四頭筋の活動が顕著に増加しました。
これは、狭いスタンスでスクワットを行うと膝関節の屈曲角度が深くなり、大腿四頭筋にかかる負荷が大きくなるためだと考えられます。
ハムストリングス群(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)の活動
- ハムストリングスの筋活動は、広いスタンスでのスクワットで高い傾向が見られました。特に重い負荷で行う際、広いスタンスではこれらの筋肉が大きな役割を果たすことが示されました。これは、広いスタンスにおいて骨盤がより後方に引かれるため、ハムストリングスがより強く関与するためとされています。
内転筋群(大内転筋)の活動
- 内転筋の活動は、広いスタンスで最も顕著に増加しました。広いスタンスでは股関節の内転動作が強調されるため、内転筋が主に使われます。これにより、内もも(内転筋群)の鍛錬には広いスタンスが有効であることが示唆されました。
腸腰筋の活動
- 腸腰筋は、スタンス幅に関わらず、重い負荷を用いた際に最も活動が増加しました。腸腰筋は股関節の屈曲をサポートするため、重い負荷でのスクワットにおいて特にその役割が重要になります。
バーベルの負荷と筋活動
- すべての筋肉群において、バーベルの負荷が増加するにつれて筋活動が増加する傾向が確認されました。特に、90%の1RM(最大挙上重量)の場合、ほとんどの筋肉で筋電図活動が最大となりました。しかし、筋活動の増加率は、スタンス幅によって異なる筋肉間で変動がありました。
考察
この研究から、スクワットにおけるスタンス幅が筋肉の動員に与える影響が明らかになりました。狭いスタンスでは、大腿四頭筋がより多く動員され、広いスタンスでは内転筋やハムストリングスがより活動的になることが示されました。
したがって、トレーニング目標に応じてスタンス幅を調整することが、特定の筋群をターゲットにするために重要だといえます。
さらに、バーベルの負荷に関しても、軽い負荷では大腿四頭筋の活動が顕著であったのに対し、重い負荷では腸腰筋やハムストリングスなどの筋肉の活動が増加する傾向が見られました。
これにより、負荷の違いが筋肉の動員パターンに与える影響も確認され、トレーニングの負荷設定が筋肉の成長に与える重要性が示唆されました。
結論
この研究の結果を総合すると、バックスクワットにおけるスタンス幅とバーベル負荷が筋肉の活動に大きな影響を与えることが確認されました。
狭いスタンスは大腿四頭筋を効果的に鍛え、広いスタンスではハムストリングスや内転筋群により多くの負荷がかかるということです。
また、バーベル負荷の増加により、全体的な筋活動も増加するため、トレーニング目的に応じてスタンス幅や負荷を調整することが効果的であると考えられます。
この研究は、筋力トレーニングにおける効果的なプログラム設計に対して、貴重な知見を提供しており、特定の筋肉群をターゲットにしたい場合や負荷設定の際の参考となるデータを提示しています。
専門記事③
【今回の参考文献】「スタンスの違いがスクワット動作時の筋活動に及ぼす影響」
目的
スクワットは下肢と体幹の筋力強化に広く利用される運動です。この研究の目的は、スタンス幅の違いが下肢筋群の筋活動に与える影響を、筋電図(EMG)を使用して定量的に評価することでした。
方法
実験では、3種類のスタンス幅(狭い、中間、広い)でスクワットを行い、8つの主要な筋群(大腿四頭筋、内転筋群、大臀筋、ハムストリングスなど)の筋活動を測定しました。
負荷条件として、軽度、中程度、重度の3段階のバーベル重量が使用されました。被験者は、トレーニング経験のある男性が対象です。
結果
スタンス幅が異なることによって、特定の筋群の活動が変化しました。
具体的には、内転筋群や大臀筋において、広いスタンスでは活動が増加し、狭いスタンスでは大腿四頭筋が優位に働く傾向が見られました。
また、負荷が重くなるにつれて全体的な筋活動も増加する結果が得られましたが、スタンスの影響は特定の筋群に強く作用しました。
考察
広いスタンスは、内転筋群や大臀筋を強化したい場合に効果的である一方で、狭いスタンスは大腿四頭筋の発達に効果があることが示唆されます。
したがって、トレーニングの目的に応じて、スタンス幅を調整することが重要です。
また、負荷の重さに応じた筋活動の変化も考慮する必要があり、特に高重量のトレーニングでは、スタンス幅の選択が下肢全体の筋力向上に寄与する可能性が高いと考えられます
結論
スタンス幅は、スクワット時の下肢の筋活動に大きな影響を与えるため、効果的なトレーニングを行うためには、スタンス幅の選択を慎重に行うべきです。
広いスタンスは内転筋群と大臀筋に有利で、狭いスタンスは大腿四頭筋に有効であることが示されています。この知見は、アスリートやリハビリテーションにおいて、効率的な筋力強化プログラムを設計するために重要です。